2021
髙山瑞 個展「灰色の□□」|2021.4.18-5.1|galerieH
photo | 桜井ただひさ
灰色の正方形 / 球
樟
2021
かく
樟
2021
灰色のシャルル5+3+8=16世
樟
2021
灰色の本 / ゑる
樟
2021
灰色の羊飼い娘 / 灰色の煙突掃除の少年
樟
2021
「灰色の□□」
文字や絵や記号などの線に関心を持っている。
二次元と呼ばれる平面に定着したオブジェクトではあるが、そこに三次元的な奥行きを感じている。
線をかく筆が、面の手前で上下するように、文字も面の奥で上下する。
私はそこに鑿を使い、少しばかり確かな肉付きを与える。
今回の個展では2次元と3次元を往復する存在を小説・漫画・アニメーションの表現に見出し、その姿を木彫によるレリーフに取り入れている。二次元にあるものが三次元へ来ようとする瞬間、あるいは三次元にあるものが二次元へと没入することにより両者が同期・融合する瞬間を取り入れ、物語の流れから切り離された線と余白が互いに白でも黒でも無い灰色にある姿を提示することを試みた。
漫画やアニメーションは、一つの絵があり一つのコマがあり、それが連続することで物語に成る。しかし物語の一部である一枚の絵や一つのコマを切り取って単体でそこに提示し、その物語を知らない人が見たならば、一体何を伝えたいのかどんな物語なのか理解することは簡単ではない。それは初めて見る記号のように、ただの絵になってただの線と余白になる。文字と文章の関係と同じで、文字ひとつひとつが連なっていくことで、言葉や物語が紡ぎ出される。一文字を一つの言葉をじっくりみるように、一コマをワンシーンをじっくりみてみたりしたい。言葉を文字に戻しさらに線と余白に戻す。それはただの線と余白の量になる。 物語の流れから切り離し線の状態に戻したものを物質である木の材に彫り刻む。奥行きを圧縮して彫る制作法ではなく、線と余白の揺らぎを板材に彫ることで、意味を持つものに変化する不思議、あるいは別の記号に変化してしまう可能性を模索する。
【引用作品】
高野文子『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』講談社(2002)
ポール・グリモー『王と鳥』(Le Roi et l’Oiseau)(1980)
E.A.アボット 著『二次元の世界―平面の国の不思議な物語』 講談社 (1977) 高木茂男 訳
パレオグラフィの木屑 関根ひかり+髙山瑞|2021.3.28-4.10|galerieH
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和紙
2020
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青森ヒバ
2020
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和紙
2020
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青森ヒバ
2020
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和紙
2020
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青森ヒバ
2020
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和紙
2020
パレオグラフィ(Paleography = 古書体学)とは、あらゆる時代の、あらゆる書体の解読と、その字体の変遷を研究する学問である。
本展覧会「パレオグラフィの木屑」では、文字が複製される過程でかたちを変え、ついには解読できぬ姿になっていくさまに文字の起源を重ねる。
かつて、種字彫師と呼ばれる職人達がいた。彼らは、活版印刷で用いられる文字を原寸かつ反転した状態で小さな四角柱状の木や金属に直彫りする超絶な技巧を極めた。
一方、髙山は、古典文学からの引用によって文字を木に定着させる彫刻を制作してきた。関根は、髙山の姿に種字彫師との呼応を見出し、両者それぞれの文字を彫るという行為の重なりや差異から詩を制作した。
今回、髙山が引用するのはこの関根の詩である。詩の印刷には、使われなくなった印刷所に置かれたままだった活字を引き取り、使用している。髙山が彫る木の下に活字を組み、木を彫る重圧によって印刷を試みた。こうして印刷された文字を、さらに別の木に彫る作業を繰り返し、文字はある時点から文字ではなくなっていく。その時、木が成す造形からは何を読むことができるだろうか。
「パレオグラフィの木屑 box」
2021
H25×W160×D160 mm
この箱は、『パレオグラフィの木屑』の作業工程を構造的に視覚化し、コンセプトを表した本展覧会の作品のひとつである。会場に展示される詩とは別に、この箱のためだけに新たな詩を制作した。箱はこの詩を構成する文字の数だけある。そして、その一文字一文字がそれぞれの箱のタイトルとして添えられている。かつては「詩だった」文字とともに、本展覧会の空気を収めた。
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