2016

「 木のシンギュラリティ 」|2016.11.18-11.27|旧平櫛田中邸

地平面

2016

分厚い面から始まった。

 

木の表面である45㎝の起伏から年輪の中心に向かって切り込み、

その結果、面は輪となり初めとは異なった円状の中心点が生まれる。

 

永遠に無限に点は連なり円環構造を生み出すかと思われたがそうはならず、

穴の上下は繋がらなかった。

 

事象の地平面が穴に現れたのだろうか。


 「 平成27年度 卒業・修了制作展 」|2016.1.15-1.18|武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス 2号館

photo加藤健

海の群星

2016

 

樹という一つの生命であったモノに、中心的な線を探る行為を与えることで、かたちは分断され新たなかたちが生まれる。年輪の終端は外へ離れてゆくが現在の空間は中心へと近づき、それは過去を学ぶこと、生命進化の過程に似ていると感じた。いつの間にか中心を通り越し深く彫り込まれた場所だけは私念であり、その事により内側に反転するものを持つという点で原始の魚、人間、植物、地球の構造を持つ一つの世界のように考えたが、私達はまだ中心を見つけられない。

髙山瑞

 

大木の自然な形体を保ちながら、表面の傷痕を彫りの起点とし、内部へと彫り込み、その結果無数の丸み帯びた突起を持つ作品を出現させた。その突起は大木の中心に向かっているようにも見えるが、それぞれの突起は微妙に方向を変え、決して一つの中心に向かうのではなく、内部に多中心的視線の束を幻視させる。この内部の構造は彫り出した突起によってもたらされたものであり、彫刻の表面と内部構造との関係は、古典的西欧彫刻の求心性とは異なっている。木という植物から産み出された形体ではあるが、細胞分裂を繰り返し、海の中から発生した生物全般の有り様をも示している。自己の意識の半身を絶対的自然に寄り添いながら、同時に人間的構築を、彫刻を通して探究しようとする意志を感じさせる。

彫刻学科教授 戸谷茂雄